2014年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が11月10~11日に北京にて開催されました。10月20日にインドネシア大統領に就任したばかりのジョコウィドド氏にとって国際舞台へのデビューです。ジョコウィドド大統領の首脳サミット会議での演説がとてもすばらしいものだったので、ご紹介したいと思います。(Joko Widodo, President of Indonesia, at the APEC CEO Summit)
ジョコウィドド大統領はインドネシア語でなく英語で、一切原稿を読むことなく、「インドネシア投資の魅力」について演説しました。大統領の演説としては異例のパワーポイントを自分で操作するというやり方で、さらに不慣れな英語で原稿を見ることなく演説したというところがまず驚いた点です。そして何よりもその内容が言いたいことを、つまり、「インドネシアへの投資はビジネスチャンスである」ということをストレートに訴えたところがとても評価されています。大統領の演説というよりは、ビジネスエグゼキュティブのプレゼンテーションを見ているようです。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)の参加国は2014年現在で21か国・地域です。開催ホスト国の中国を始め、ほとんどが外国投資より外資誘致を望む中、この「インドネシア投資」のメッセージは一部の参加国、特に日本に向けて発せられた気がしてなりません。ジョコウィドド大統領の登場でジャカルタのインフラ整備が進むだけでなく、在任期間の5年間(再選すればさらに5年)でインドネシア全体のインフラ整備が急速に行われていくことだと思います。ジャカルタでの日本の貢献実績を踏まえて、インドネシア全体についても日本の役割が大きいはずです。もし日系企業が投資事業に参加せずに、結果として相対的にローレベルな手抜きインフラが出来上がって破損して事故でも起こしてしまうよりは、日本の技術を活用してハイクオリティーのインフラを導入してもらいたいと思っています。
日本の安倍首相と初顔合わせとなる会談も行い、日本政府レベルではその大統領のメッセージの意図は十分にわかっているとしても、民間レベルでどれほど伝えられているのか不安になりました。ここ数日のテレビや新聞の報道を見る限り、日本と中国の2国間の関係改善が図られたというような表面的なことだけが伝えられているような気がします。インドネシア関連のニュースはあまり多くない印象です。APEC首脳会議でのジョコウィドド大統領が自ら発信した「インドネシア投資はビジネスチャンス」であるというメッセージが、少しでも伝播すれば良いと思い、メッセージの原文を要約してみました。(ほぼ全訳です。)
私は数年前までビジネスマンだったので、今日はビジネスのお話ができることをとても うれしく思います。インドネシアは2億4千万人の人口を抱え、2015年の国家予算は1670億ドルで、そのうち 燃油補助金は270億ドルもあります。その燃油補助金を消費活動ではなく、むしろ 生産活動において活用されるようにしたいと考えています。
例えば、農場の種苗、肥料、灌漑などです。ダム建設(5年以内に25のダムを新設) により農場への水の供給を安定化します。
次に、漁業への補助です。例えば、漁船のエンジン、冷凍設備の導入により、漁業従事者の 収入を増やします。また、地方の村の零細、中小企業が運転資金を確保するための補助です。 その他、健康、教育、そして、インスラストラクチャーの整備に充てます。
インドネシアは17000の島々から成ることはご存じでしょう。私は、これから5年間の間に 24の港湾を建設します。これは皆様にとって大きなビジネスチャンスです。スクリーンでご覧になっているのは、ジャカルタのタンジュン・プリオク港です。 2009年には20フィートコンテナ換算(TEC)で360のキャパシティーだっとのが、2017年には 1500TEUの貨物を取り扱うことになります。インドネシアの潜在的な港であり、 皆様のビジネスチャンスになることでしょう。スマトラ島、カリマンタン島、ジャワ島、 スラウェシ島、マルク島、パプア島にも港湾を建設します。
鉄道網の建設も計画しています。ジャワ島はすでに鉄道網がありますが、スマトラ島、 カリマンタン島、スラウェシ島、パプア島にも建設します。これも皆様の ビジネスチャンスとなるでしょう。
大量輸送機関については、6つの都市に導入します。ジャカルタでは既に工事着工済みですが、 メダン、マカッサル、セマラン、バンドン、スラバヤにおいても同様に進めてまいります。 これも皆様にとってビジネスチャンスになるでしょう。(我々の予算には限りがありますし。)
次に海洋関係について。海の(有料)通路システムを導入します。海の通路とは、運送料金を低く抑え 効率的にするものです。西の端から東の端まで続く海の通路には、母船も含めあらゆる船舶が 通行します。その結果、海洋運送料金は効率化されます。例えば、現在セメントの価格はジャワ島では 一袋6ドルですが、パプア島では150ドルになっています。実に25倍です。この海の通路を 導入するとセメント価格は同一になります。
電力供給については、さらなる発電所が必要です。これらのプロジェクトを遂行して工業団地に 製造拠点を建設するのには35000メガボルトの電力が必要だからです。これも皆様にとってビジネスチャンスに なります。
投資家の皆様が私に言う苦情は、土地の確保が難しいということです。これについては、閣僚や 州知事、市長たちに問題を解決するように指示いたします。個人的には、州知事時代にジャカルタ市 郊外に環状道路を建設しようとしたときの経験があります。このプロジェクトは15年前に始まりましたが、 8年前に中断しました。原因は、1.5キロメートルの区間に居住していた143世帯が補償金の金額を 受け入れなかったからです。わたしは去年、彼らを食事会に招き、4度に渡り説得を試みましたところ、 問題を解決した経験があります。この環状道路は7か月前より稼働を開始したところです。
さて、ビジネス許可についてですが、インドネシアは「ワンストップサービスオフィス」を設けて おり、基本的な許可は3営業日で取得可能になっています。
皆様がインドネシアに投資されることをお待ちしております。
ありがとうございました。
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